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新潟地方裁判所 昭和24年(ヨ)3号 決定 1949年2月04日

債権者

東京芝浦電気株式会社加茂工場労働組合

債務者

東京芝浦電気株式会社

当裁判所は債権者の申請を相当と認め債権者に保証として金五万円也(昭和二四年金第九八号)を供託させて左の通り決定する。

主文

債務者は東北配電株式会社との間に新潟県南蒲原郡加茂町大字上条六百三十二番地所在の債務者会社工場に対する電力の供給を廃止する手続をしてはならない。

申請

新潟地方昭和二四年(ヨ)第三号電力供給廃止手続禁止等仮処分申請事件(昭和二四、二、一申請)

一、当事者

申請人 東京芝浦電気株式会社加茂工場労働組合

被申請人 東京芝浦電気株式会社

二、申請の趣旨

(一)、被申請人は新潟県南蒲原郡加茂町大字上條六三二番地所在の東芝加茂工場が東北配電株式会社新潟支店と締結したる電力供給契約に対し申請人の同意なくして受電廃止届をしてはならない。

(二)、被申請人は新潟県南蒲原郡加茂町大字上條六三二番地所在の東芝加茂工場が東北配電株式会社新潟支店と締結したる電力供給契約に対し申請人の同意なくして自家用電気工作物廃止届をしてはならない。

(三)、被申請人は前項により申請人が使用したる電気料金を支払ひ規定の電力の受給を受けねばならない。

(四)、被申請人は申請人の加茂工場に於ける電力の使用を妨げてはならない。

三、申請の理由

(一)、申請人組合は被申請人会社の従業員を以て組織せられ労働組合法に依り認められたる労働組合である。

(二)、申請人組合と被申請人会社とは昭和二十三年十二月〇日以降独立採算制に起因して目下争議中である。

(三)、被申請人会社は昭和二十三年十二月以降の給料を未払の侭労働協約に違反し一方的に工場閉鎖を宣言し剰へ工場幹部一同共に所在をくらました。

(四)、申請人組合は其の生活権擁護の為必然的に生産管理をせざるを得ない立場に追込まれたので現在生産管理を実行して其の収益により辛じて給料の一部を満しているのであつて其の為めに是非共電力の使用が絶対必要な条件であることは云うまでもない。

(五)、右の如き事態にある時被申請人会社が受電廃止届及自家用電気工作物廃止届をして電力の受給契約を廃止しようとする事は即ち申請人組合の組合員四九七名の生存権を脅すことであり労働権争議権の剥奪である外公序良俗に反するものである、かかる行為が遂行されるならば申請人組合の組合員の生活に回復する事の出来ない損害を蒙ること明瞭である。依つて本案の判決を得るまで申請の趣旨記載のような仮の地位を定める仮処分命令を申請する。

新潟地方裁判所 御中

当裁判所で当事者双方を審問した結果によれば、

仮処分申請理由の要旨は現に組合及会社側の双方より申請した仮処分事件が係属中で之は目下弁論を開き審理中でありその事件は会社側で組合員に出した帰休命令が労働協約に反するか否かが根本の争いであり右帰休命令に引続き会社側で行つた対抗手段としての工場閉鎖並組合側で行つて居る生産管理が附帯して争点となつて居りその審理中更に会社に於て之が対抗手段として電力の受給を廃止迄すると云ふことは結局権利行使の行き過ぎであつて組合としてはその為に組合員四九七名の生存権を不当におびやかされることになり回復すべからざる損害を生ずる虞もある。のみならず工場電力は生産(六十パーセント)並保安用(四十パーセント)の二種類がありその配線が一本になつて居る為電力を廃止される場合右保安用の送電迄も停止される虞れもあつて之が実現されると組合員の生存権に脅威を来す結果になる。

従つて会社が配電会社との間に電力供給契約を解除して電力の受給を廃止すると言ふことは結局権利の濫用であり、労働権の不当な侵害である。且公序良俗に反するので無効である。

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